ピロリ菌検査・除去について

ピロリ菌検査・除去のイメージ写真

ピロリ菌は、胃の内部に生息していることがある4ミクロンほどの細菌で、正式にはヘリコバクター・ピロリと言います。胃の内部は強酸性の胃酸が常に分泌されているため、一般的な細菌は生息しにくい環境下にありますが、ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を自ら産生し、これが胃の粘液中の尿素を分解して中和することで生存し続けます。

ピロリ菌が棲みつくと

ピロリ菌が慢性感染するためには、5~6歳ころまでの未成熟な胃に感染することが必要であるといわれています。ピロリ菌に感染したとしても、すぐに何かしらの病気に罹患するということではありません。しかし、ピロリ菌が原因となって慢性的な胃の炎症が見られるようになります。これによって胃酸分泌や粘液分泌に異常をきたし、胃・十二指腸潰瘍や胃炎といった消化器疾患のリスクが高くなります。また、ピロリ菌感染による慢性胃炎になると、40歳ころから萎縮性胃炎へと進行していき、胃がんを発症するリスクが非常に高くなります。院長は、ピロリ菌感染診断に基づく胃がんリスクを考慮した胃がん検診に永年携わってきました。当クリニックでは、ピロリ菌感染が疑われる方を対象として、ピロリ菌の有無を確認する検査を行っています。そのうえで、ピロリ菌の存在が確認された場合にはピロリ菌除菌治療を行いますので、まずはお気軽にご受診ください。

ピロリ菌の検査

ピロリ菌の検査には、胃カメラ検査(内視鏡検査)を伴う方法と、内視鏡検査を伴わない方法があります。主な内容は下表をご参照ください。

胃カメラ(内視鏡)を用いたピロリ菌検査

培養法
採取した胃粘膜をすり潰し、5~7日間かけて培養して調べる方法です
迅速ウレアーゼ法
ピロリ菌に存在するウレアーゼという酵素が生成するアンモニアの有無から判定する方法です
組織鏡検法
胃粘膜の組織をHE染色やギムザ染色し、顕微鏡でピロリ菌の有無を観察する方法です

内視鏡検査を用いないピロリ菌検査

尿素呼気試験
呼気に含まれる二酸化炭素の量を測定することにより、ピロリ菌が存在するか否かを測定するものです
便中抗原測定
便を採取し、抗体の原因成分であるピロリ菌の有無を調べる方法です
尿中抗体測定
尿検査によって、尿に含まれるピロリ菌の抗体の有無を診断する方法です
血液検査
血液を採取し、ピロリ菌を排除するために生成された抗体の有無を調べる方法です

ピロリ菌の除菌治療

検査によってピロリ菌が見つかったときは、お薬を組み合わせた除菌治療を行います。まずはプロトンポンプ阻害薬(胃薬)と2種類の抗生物質を7日間服用します。プロトンポンプ阻害薬で胃酸の分泌を抑えておいてから抗生物質でピロリ菌を除菌します。内服終了後2カ月以上経過してから、尿素呼気試験か便中抗原測定法で除菌治療の効果を判定します。1回目の除菌療法による除菌率はおおむね90%程度だと言われています。なお、最初の除菌療法でうまくいかなかった場合は、違う薬を使って再度、除菌療法を行うことができます。この方法により、1回目に失敗した方の95%以上の方が除菌に成功します。2回目の除菌治療までは、保険診療での治療が可能です。2回目までで除菌に成功しなかった場合は、自費診療での除菌治療を行うかそれ以上の除菌治療は行わず厳密な経過観察を行っていくかを選択することになります。
最初に書いているように、ピロリ菌は5~6歳ころまでの未成熟な胃でないと慢性感染はできないといわれており、除菌治療成功後に再度感染することは非常にまれであると考えられています。このような場合の多くは、微量に残存していたピロリ菌が再増殖したものと考えられています。