• 2025年9月24日

【高尿酸血症を医師が解説】足の親指の激痛!痛風の本当の怖さと、尿酸値を下げるための生活習慣

ブログをご覧いただきありがとうございます。
きなが内科・内視鏡クリニック院長の木長健です。

「ある日の朝、突然、足の親指の付け根に、風が吹いただけでも飛び上がるほどの激痛が…」

そんな経験に心当たりはありませんか?それは、生活習慣病の一つである「痛風」の発作かもしれません。働き盛りの男性に多く、成人男性の5人に1人はその予備軍とも言われるほど、決して他人事ではない病気です。

今回は、痛風の激痛の正体から、その裏に隠された本当の怖さ、そして今日からできる対策まで、お伝えいたします。


セクション1:激痛の正体は、血液に溶けきれなくなった「尿酸の結晶」

痛風の痛みの原因は、血液中の「尿酸」という物質です。

尿酸は、体の新陳代謝によって生まれる老廃物で、通常は尿と一緒に排出されます。しかし、作られすぎたり、排出がうまくいかなくなったりすると、血液中に尿酸が溢れてしまいます(高尿酸血症)。

血液に溶けきれなくなった尿酸は、先端が鋭く尖った針のような結晶となって、関節(特に足の親指の付け根)に溜まります。痛風発作は、この「針」を白血球が異物とみなして攻撃することで起こる、激しい炎症反応なのです。


セクション2:【重要】もし発作が起きてしまったら?応急処置とNG行動

もし激しい痛みに襲われたら、まずは落ち着いて以下の対処をしてください。応急処置で痛みが少し和らいでも、必ず医療機関を受診してください。

【やるべきこと(DOs)】

  • 患部を冷やす: 濡れタオルなどで冷やし、炎症を和らげます。
  • 患部を心臓より高くする: クッションなどの上に足を乗せ、腫れを軽減させます。
  • 痛み止めを飲む: 市販の解熱鎮痛薬(ロキソプロフェンやイブプロフェンなど、飲み慣れたもの)があれば服用します。

【やってはいけないこと(DON’Ts)】

  • 患部を温める: 血行が良くなり、痛みが悪化します。お風呂もシャワー程度にしましょう。
  • 患部をもむ: 炎症をさらに広げてしまいます。
  • お酒を飲む: アルコールは血行を促進し、尿酸値を上げるため、絶対にやめましょう。

セクション3:痛風の本当の怖さは、痛みのない期間に進行する「合併症」

痛風発作の痛みは1〜2週間で和らぎますが、「治った」わけではありません。痛みのない期間にも、高尿酸血症は静かにあなたの体を蝕んでいきます。痛風発作は、あなたの体が発する「最後の警告(SOSサイン)」なのです。

危険① 腎臓へのダメージ

尿酸の結晶は、腎臓にも溜まります。これが腎臓の機能を低下させ、最悪の場合「腎不全」に至り、人工透析が必要になることもあります。また、尿の通り道で石になる「尿路結石」も、激しい痛みを引き起こします。

危険② 他の生活習慣病との悪循環

高尿酸血症の方は、高血圧、脂質異常症、糖尿病を合併していることが非常に多く、これらが重なることで、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる動脈硬化性疾患のリスクが急増します。


セクション4:「なぜ私が?」痛風になりやすい人の特徴と原因

高尿酸血症の原因は、遺伝的な体質に加えて、以下のような生活習慣が大きく影響します。

  • 食事: レバー類や魚の干物など「プリン体」の多い食品、高カロリー・高脂肪な食事が好きな方。
  • アルコール: 特にビールを好んで飲む習慣がある方。
  • 肥満: 肥満、特に内臓脂肪は、尿酸の排出能力を低下させます。
  • その他: 激しい運動をする習慣、ストレスが多い、水分摂取が少ない方。
  • 性別: 95%以上が男性です。女性ホルモンには尿酸の排出を促す働きがあるため、女性はなりにくいですが、閉経後は注意が必要です。

セクション5:尿酸値を下げるための生活習慣改善

食事のポイント 〜プリン体よりも総カロリーが重要〜

「痛風=プリン体」のイメージが強いですが、実は体内の尿酸の約7割は自分自身の新陳代謝で作られます。食事で最も重要なのは、プリン体の多い食品を神経質に避けることよりも、食べ過ぎ・飲み過ぎを改めて、肥満を解消すること(総カロリーの制限)です。
その上で、プリン体を多く含むレバー類、魚卵、干物などは「たまに、少しだけ」と頻度を意識しましょう。また、プリン体は水に溶けるため、肉や魚は「煮る」「茹でる」調理法がおすすめです。ただし、鍋物の美味しいスープにはプリン体が溶け出しているので、飲み干すのは控えましょう。

アルコールのポイント 〜「プリン体ゼロ」でも安心はできない〜

「プリン体ゼロのビールなら大丈夫」と思っていませんか?実は、アルコールが尿酸値を上げる理由は3つあります。

  • アルコール自体が尿酸を作る
  • アルコールが尿酸の排出を妨げる
  • ビールなどに含まれるプリン体

つまり、プリン体ゼロでも、アルコールである限り①と②の作用は残ります。 どの種類のお酒でも、「適量を守る」ことが最も重要です(ビールなら500ml/日、日本酒なら1合/日程度)。

その他のポイント

  • 水分をしっかり摂る: 尿量を増やして尿酸を排出するため、水やお茶を1日2リットルを目安に飲みましょう。
  • 適度な運動を: ウォーキングなどの有酸素運動は肥満解消に効果的です。ただし、息が切れるほどの激しい運動は、かえって尿酸値を上げ、発作の引き金になることがあるので注意しましょう。

セクション6:治療の鍵は「継続」〜痛みが消えても薬をやめないで〜

痛風の治療は、2段階で行います。

  1. 発作時: 炎症と痛みを抑える薬(消炎鎮痛薬など)
  2. 発作のない時: 血液中の尿酸値を下げる薬

最も重要なのは、2番目の尿酸値を下げる治療です。関節に溜まった尿酸の結晶を溶かしきるには、尿酸値6.0mg/dL以下を、最低でも数年間は維持する必要があります。

痛みが消えたからといって自己判断で薬をやめてしまうと、水面下で結晶は溜まり続け、必ず発作を再発します。根気強い治療の継続が、未来の健康を守る鍵です。

当院では、患者様一人ひとりの生活習慣や合併症を考慮し、最適な治療法をご提案します。健康診断で尿酸値の高さを指摘された方、痛風発作を経験された方は、決して放置せず、お気軽にご相談ください。

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