• 2025年8月8日

帯状疱疹の初期症状を見逃さないためのポイント

「あれ?なんだか体の片側だけチクチク痛む…」
「原因不明の違和感が続いている…」

そんな経験はありませんか? もしかしたら、それは「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」の始まりかもしれません。

帯状疱疹は、多くの人が子供の頃にかかる水ぼうそうと同じウイルスが原因で起こる皮膚の病気です。痛みを伴う発疹や水ぶくれが特徴ですが、症状がひどくなると夜も眠れないほどの激しい痛みに悩まされ、皮膚症状が治った後も「帯状疱疹後神経痛(PHN)」というつらい痛みが長く残ってしまうこともあります。

この記事では、帯状疱疹の初期症状にいち早く気づき、適切な対応をとるためのポイントを解説します。


そもそも帯状疱疹とは?

帯状疱疹は、「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされます。 多くの人が子どもの頃に水ぼうそう(水痘)にかかりますが、治った後もこのウイルスは体内の神経節(神経の根元)に静かに潜んでいます。そして、加齢、ストレス、過労などで免疫力が低下したときに、潜んでいたウイルスが再び活動を開始し、神経を伝って皮膚に到達し、帯状疱疹として発症するのです。

日本人の成人の9割以上がこのウイルスを持っているとされ、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するとも言われています。決して他人事ではない病気なのです。


なぜ「初期症状」の見極めが重要なのか?

帯状疱疹の治療では、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」が使われます。この薬は、発症早期(できれば発疹が出てから72時間以内)に飲み始めることで、症状の悪化を防ぎ、治るまでの期間を短縮し、そして何より、つらい後遺症である帯状疱疹後神経痛(PHN)のリスクを減らす効果が期待できます。

だからこそ、本格的な発疹が出る前の「初期症状」に気づき、できるだけ早く医療機関を受診することが非常に重要なのです。


見逃さないで!帯状疱疹の「初期症状」のサイン

多くの場合、帯状疱疹は皮膚に発疹や水ぶくれが現れる数日~1週間ほど前から、体の左右どちらか一方の神経に沿って、以下のような初期症状が現れます。

  • 皮膚の痛み・違和感・かゆみ:
    • 「ピリピリ」「チクチク」「ズキズキ」「ジンジン」といった神経痛のような痛み。
    • 「焼けるような」痛みと感じる人もいます。
    • 服がこすれるだけで痛い、といった感覚過敏。
    • 原因不明のかゆみや違和感。
    • 最初は軽い痛みでも、徐々に強くなることがあります。
  • 全身症状(伴う場合がある):
    • 発熱
    • リンパ節の腫れ(特に症状が出ている側)
    • 頭痛
    • だるさ(倦怠感)

ポイントは「体の片側だけ」に症状が出ることです。 胸から背中、腹部、顔、首、腕、お尻や足など、体のどこにでも起こり得ますが、通常は左右どちらか一方の神経の通り道に沿って症状が現れます。

【画像:帯状疱疹_頭部】

顔面や頭部に発症することもあります。

【画像:帯状疱疹_右腕】

このように腕(片側)に症状が出ることもあります。

ただし、症状の出方には個人差があり、痛みを感じずに発疹から始まる人や、痛みと発疹が同時に出る人、痛みが遅れて出てくる人もいます。


初期症状の後の経過

初期の痛みや違和感があった場所に、次のような皮膚症状が現れてきます。

  1. 赤い発疹: 少し盛り上がったような赤いブツブツが出始めます。
【画像:帯状疱疹_初期】

初期段階で見られる赤い発疹の例。

  1. 水ぶくれ: 発疹が小さな水ぶくれに変化し、数が増え、帯状に広がっていきます。水ぶくれの中に膿がたまることもあります。
【画像:帯状疱疹_5日目】

発症5日目頃。水ぶくれがはっきりしてくる時期の例。

【画像:帯状疱疹_中期】

水ぶくれが帯状に広がった、中期(急性期)の典型的な状態。

  1. かさぶた: 水ぶくれは約1週間ほどで破れ、かさぶたになります。
  2. 治癒: 皮膚症状は通常3週間ほどで治まりますが、人によっては色素沈着や傷あとが残ることもあります。

この間、痛みは続くことが多く、特に水ぶくれが出ている時期は痛みが強くなる傾向があります。


「もしかして?」と思ったら、すぐに医療機関へ

帯状疱疹が疑われる以下のような症状に気づいたら、自己判断せず、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

  • 体の片側に原因不明の痛み、ピリピリ感、かゆみがある。
  • 痛む場所に赤い発疹や小さな水ぶくれが出てきた。

何科を受診すればよいか?

  • 皮膚に発疹や水ぶくれが出ている場合: 皮膚科
  • 発疹はまだないが、片側の痛みが続く場合: 内科 または 皮膚科
  • 痛みが非常に強い場合: ペインクリニック

医師が診察し、帯状疱疹と診断されれば、すぐに抗ウイルス薬や痛み止めの治療が開始されます。早期治療が、つらい症状や後遺症を防ぐ鍵となります。


周りの人への配慮(うつる?)

帯状疱疹そのものが、空気感染などで他の人にうつることはありません。 しかし、水ぶくれの中にはウイルスが含まれています。水ぼうそうにかかったことがない人や、水ぼうそうのワクチンを接種していない人(特に乳幼児や妊婦さん)が、このウイルスに接触すると、水ぼうそうとして発症させてしまう可能性があります。

水ぶくれがすべてかさぶたになるまでは、念のため、水ぼうそうの免疫がない人との接触は控えるようにしましょう。


帯状疱疹は、早期発見と早期治療が、つらい痛みや後遺症のリスクを最小限に抑えるために非常に重要です。「体の片側に」「神経に沿って」「ピリピリ・ズキズキするような痛み」といった初期症状のサインに気づいたら、自己判断せずに速やかに医療機関を受診しましょう。

それに加えて、帯状疱疹はワクチンで予防するという選択肢もあります。 特に50歳以上の方は発症リスクが高まるため、ワクチン接種が推奨されています。
当院でも、帯状疱疹ワクチンの接種を行っております。

「自分はワクチンを接種した方がいいのかな?」 「費用やワクチンの種類について知りたい」 といったご相談からでも結構です。帯状疱疹の予防に関心のある方、ワクチン接種をご希望の方は、どうぞお気軽に当院までご相談・ご来院ください。


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