- 2025年5月28日
【感染症情報】百日咳とりんご病が流行中です!特に大人の「りんご病」は症状にご注意を

こんにちは。
きなが内科・内視鏡クリニックです。
最近、ニュースや自治体からの情報で「百日咳(ひゃくにちぜき)」や「りんご病(伝染性紅斑)」の感染者数が急増しているとの報道を目にされた方も多いのではないでしょうか。実際に、国立健康危機管理研究機構の最新データ(2025年5月27日更新、5月12日~5月18日集計分)によると、百日咳の全国の新規感染者数は2299人と過去最多を記録し、りんご病も1医療機関あたり2.05人と過去10年で最も多い状況です。埼玉県では5月13日にりんご病の流行警報も発令されました。
これらの感染症は、特にお子さんを中心に流行しやすいものですが、大人が感染すると症状の出方が異なったり、重症化するケースもあるため注意が必要です。今回は、百日咳とりんご病について、改めてその特徴や注意点、そして当クリニックからのお願いをお伝えします。
長引く咳に注意!「百日咳」について

百日咳は、その名の通り激しい咳が長く続くのが特徴の細菌感染症です。
特徴的な症状
最初は風邪のような症状から始まりますが、次第に咳が激しくなり、短い咳が連続して起こり(スタッカート)、最後にヒューと笛を吹くような音を伴う呼吸困難(ウープ)が見られることがあります。
特に乳幼児が感染すると、咳で呼吸ができなくなり、無呼吸発作やけいれん、脳症などを起こして重症化したり、命に関わることもあります。
感染経路
主に咳やくしゃみによる飛沫感染、また接触感染によっても広がります。
予防のポイント
乳幼児期に受けるDPT-IPV(四種混合)ワクチンや、学童期以降の二種混合ワクチン、また任意接種での百日咳含有ワクチンが有効です。適切な時期のワクチン接種をご検討ください。咳エチケット(マスク着用、咳やくしゃみをする際はティッシュや袖で口鼻を覆う)を徹底しましょう。
こまめな手洗い、うがいも重要です。長引く咳や特徴的な咳がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
見た目は可愛らしいけど…「りんご病(伝染性紅斑)」について

りんご病は、ヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因の感染症で、頬がりんごのように赤くなることからこの名で呼ばれています。
子どもの典型的な症状
10日~20日の潜伏期間の後、両頬に境界のはっきりした赤い発疹(紅斑)が現れます。続いて、腕や太ももなどに網目状・レース状の赤い発疹が広がることがあります。発疹が出る1週間くらい前に、微熱や風邪のような症状(鼻水、咳、頭痛、関節痛、腹痛など)が見られることがあり、この時期が最も感染力が強いとされています。
発疹が現れた後は基本的に感染力はありません
多くは自然に軽快し、特別な治療法はありません。
大人のりんご病の特徴 – ここが重要!
子どもがかかると比較的軽症で済むことが多いりんご病ですが、大人が感染すると症状が異なる場合があり、注意が必要です。
特に注意が必要な方:
- 妊婦さん: 妊娠中に感染すると、胎児に影響を及ぼし、胎児水腫や流産に至る可能性があります(10.2%が胎児死亡に至ったという報告もあります)。妊娠初期~中期は特に注意が必要です。
- 免疫が抑制されている方(ステロイド治療中、免疫抑制剤使用中、HIV感染症などの方): ウイルスを排除しにくく、貧血が持続したり重症化しやすい傾向があります。
- 溶血性貧血などの血液疾患をお持ちの方: 元々赤血球の寿命が短い状態にあるため、感染によりさらに貧血が悪化し、重篤な状態になることがあります。
予防と対策のポイント:
流行期には、手洗いや咳エチケットを徹底しましょう(アルコール消毒は効果が弱いとされているため、流水と石鹸による手洗いが推奨されます)。感染力が強いのは発疹が出る前の風邪様症状の時期なので、この時期に感染を広げやすいことを理解しておきましょう。
妊婦さんや免疫力の低下している方は、流行期には人混みを避け、感染者との接触を避けるよう心がけてください。
周囲にりんご病のお子さんがいる場合は、妊婦さんにその旨を伝え、感染予防策をとってもらうなどの配慮も大切です。
大人の場合、特徴的な頬の赤みが出ないことも多いため、「ただの風邪」「関節炎かな?」と思っているうちに、周囲に感染を広げてしまったり、診断が遅れてしまうことがあります。
当クリニックからのメッセージ
百日咳もりんご病も、基本的な感染対策(手洗い、咳エチケット)が予防の第一歩です。
- 「あれ?いつもと違うかも」と感じたら: 長引く咳、原因不明の関節痛や発疹など、気になる症状がある場合は自己判断せず、早めに医療機関にご相談ください。
- 特に大人の方へ: お子さんからうつる感染症は、大人がかかると症状の出方が異なることがあります。りんご病のように、関節痛が主症状となる場合もありますので、原因不明の体調不良が続く場合はご相談ください。
- 妊娠中の方、基礎疾患をお持ちの方へ: 感染症の流行情報に注意し、ご自身の体調管理と感染予防に努めてください。不安なことや、周囲で感染症が流行していて心配な場合は、遠慮なく医師にご相談ください。
きなが内科・内視鏡クリニックでは、地域の皆様の健康をお守りするため、引き続き正確な情報発信と適切な診療に努めてまいります。ご心配な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。