• 2025年1月6日
  • 2025年1月7日

胃潰瘍

胃潰瘍とは

胃潰瘍は、胃酸や消化酵素が過剰に分泌されることで胃の粘膜が損傷し、発症する疾患です。その主な原因として、以下のような要因が挙げられます。

1.ピロリ菌感染

胃粘膜に感染する細菌で、炎症を引き起こし直接的に胃粘膜を攻撃します。特に幼少期の家庭内感染が原因となることが多いとされています。

2.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

頭痛や関節痛などで使用される薬剤が、胃粘膜の防御機能を低下させる場合があります。特に高齢者や慢性疾患を持つ方は注意が必要です。

3.ストレスや生活習慣

慢性的なストレス、不規則な生活、アルコールの過剰摂取、喫煙などが胃潰瘍のリスクを高めます。

消化性潰瘍とは

消化性潰瘍は、胃潰瘍と十二指腸潰瘍を含む広義の疾患を指します。胃潰瘍は、食事が胃酸の分泌を促し潰瘍部分を刺激することで食後に痛みが悪化しやすく、十二指腸潰瘍は、空腹時に痛みが強まる一方、食事を摂ると症状が和らぐ傾向があります。

胃潰瘍を抱える患者の生活

胃潰瘍を患うと、慢性的な痛みや不快感により食欲が低下し、日常生活に支障を来すことがあります。また、脂っこい食べ物や酸味の強い食べ物を避ける必要があり、食事の選択肢が制限されることも少なくありません。
さらに、進行すると食事中や食後の痛みにより食欲不振や体重減少を引き起こし、栄養不足や疲労感を伴うことがあります。このような状態は、患者の生活の質を大きく損なう要因となります。

胃潰瘍の症状

胃潰瘍の初期症状

初期の胃潰瘍は、次のような軽度な症状から始まります。

  • 軽いみぞおちの痛みや不快感
  • 食後の胃もたれや満腹感
  • 軽い吐き気

症状が進行すると、痛みの頻度が増し、吐血やタール状の黒い便が現れることがあります。これらは消化管出血の兆候であり、緊急対応が必要です。

胃潰瘍の自覚症状

胃潰瘍では、鋭い痛みや灼熱感が特徴的です。この痛みは、胃酸が潰瘍部分を刺激することで生じます。また、吐き気や嘔吐は、胃の内容物が停滞している可能性を示唆します。

みぞおちや背中の痛みの違い

みぞおちの痛みは典型的な胃潰瘍の症状ですが、背中の痛みを訴える場合もあります。背中の痛みは、潰瘍が深く進行し、膵臓や他の臓器に影響を与えている可能性があります。

胃潰瘍のチェックリスト

チェックリストで胃潰瘍の潜在的症状を確認できます。
以下のような症状がある場合は医師に相談ください。

□空腹時または夜間の鋭い痛み
□吐血またはタール状の黒い便
□慢性的な消化不良やげっぷ
□食事量の減少や体重減少

胃潰瘍の検査と診断方法

胃カメラ(上部内視鏡検査)による診断

胃潰瘍の診断には、主に胃カメラ(上部内視鏡検査)を行います。胃粘膜の損傷の程度、潰瘍の深さや広がり、さらには出血の有無を確認します。さらに生検を行い、がんの可能性を確認します。

血液検査

血液検査では以下の項目を評価します。

  • ヘモグロビン値:貧血の有無を確認(出血の兆候)
  • ピロリ菌抗体:ピロリ菌感染の可能性を評価
  • 炎症マーカー:胃炎や他の消化器疾患との関連を確認

胃潰瘍の治療法とステージ

薬物療法

胃潰瘍の治療は主に薬物療法を中心に行われ、以下のような薬剤が使用されます。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)胃酸の分泌を強力に抑える薬剤です。胃粘膜の保護と潰瘍の治癒を促進します。
H2受容体拮抗薬胃酸の分泌を抑える薬剤で、PPIに次いで使用されることがあります。特に軽症の場合に効果的です。
胃粘膜保護薬胃の粘膜を物理的に保護する作用があります。アルミニウムを含む薬剤(スクラルファートなど)が一般的です。
抗生物質ピロリ菌感染が確認された場合、抗生物質を用いて除菌療法を行います。
鎮痛剤の使用についての注意一般的な鎮痛剤(NSAIDs)は胃粘膜を傷つけるため、使用には注意が必要です。代替薬としてアセトアミノフェンが推奨されます。

治癒期間は潰瘍の大きさや治療法によりますが、軽度の胃潰瘍は通常4〜6週間で改善します。重度の潰瘍や合併症がある場合はそれ以上の治療期間を要することがあります。

手術による治療

ほとんどの胃潰瘍は薬物療法で治癒しますが、以下の場合に外科的治療が検討されます。

  • 内視鏡で止血できない出血がある場合
  • 穿孔(胃に穴が開く状態)が発生した場合
  • 薬物療法が無効で症状が改善しない場合

手術には胃の一部を切除する方法(部分胃切除術)や、潰瘍の原因となる神経を切断する方法(迷走神経切断術)があります。

胃潰瘍と関連する病気

慢性的な胃潰瘍やピロリ菌感染は胃がんのリスクを高めます。特に萎縮性胃炎や腸上皮化生が見られる場合、胃がんへの移行リスクがあるため内視鏡検査による定期的なフォローアップが必要です。

消化器疾患

胃潰瘍は他の消化器疾患と密接に関連しています。

  • 逆流性食道炎(GERD):胃酸の過剰分泌が食道にも影響を及ぼすことがあります。
  • 十二指腸潰瘍:胃潰瘍と同時に発生することがあり、治療が複雑化する場合があります。
  • 胆石症:消化器系の機能低下により、胆汁の流れが悪化することがあります。

ピロリ菌

ピロリ菌感染は胃潰瘍や十二指腸潰瘍再発の主な要因です。また、感染が長期間続くと胃がんの発生リスクも高まります。ピロリ菌感染の診断は以下の通りです。

  • 呼気テスト:非侵襲的で患者負担が少ない検査方法
  • 便検査:便中のピロリ菌抗原を検出
  • 血液検査:抗体の存在を確認

感染が確認された場合、除菌療法が行われます。
これは抗生物質と胃酸抑制薬を1〜2週間服用する治療法です。

胃潰瘍の再発を減少させる方法

胃潰瘍は再発しやすい疾患です。再発を防ぐためには、以下の点に注意が必要です。

  • ピロリ菌感染の完全な除菌
  • 定期的な内視鏡検査
  • 胃に負担をかける飲食物の摂取を控える(辛いもの、アルコールなど)
  • ストレス管理と適切な睡眠

胃潰瘍を予防するための生活習慣

ストレス管理と心の健康

ストレスは胃酸の過剰分泌を促進し、胃粘膜を傷つける原因となります。ストレスを軽減するための方法として以下が挙げられます。

  • リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、ヨガ)
  • 趣味や軽い運動で気分転換を図る
  • 十分な睡眠を取る

食事による胃潰瘍の予防

胃潰瘍の予防には、胃に優しい食事を心掛けることが重要です。

  • 消化に良い食品(おかゆ、野菜スープ、蒸し野菜)を選ぶ
  • 食事量を適切に調整し、過食を避ける
  • 空腹時に胃が刺激されるのを防ぐために、1日3食を規則正しく摂る

避けるべき食品

  • 唐辛子などの刺激物
  • カフェインを含む飲料
  • 脂っこい料理や揚げ物

アルコール・喫煙の影響

アルコールや喫煙は胃粘膜に直接的なダメージを与え、潰瘍の発生リスクを高めます。禁煙と節酒は胃潰瘍の予防にとって重要なステップです。

胃潰瘍発症時の注意事項

急な痛みや吐血が見られた時の対処

急激な痛みや吐血、黒い便が見られた場合は、消化管出血や穿孔が疑われます。このような症状が現れたら、直ちに医療機関を受診する必要があります。

食事の選び方と消化サポート

発症時は以下の食品を優先しましょう

  • おかゆやスープなどの柔らかい食事
  • 脂肪分が少ない鶏肉や白身魚
  • 消化を助けるキャベツやバナナ

医療機関への受診時期について

以下の場合、速やかに医療機関を受診してください。

  • 症状が数日間改善しない
  • 吐血やタール便が見られる
  • 食欲不振や体重減少が顕著

胃潰瘍は適切な治療と予防で再発や進行を防ぐことが可能です。早期発見と定期検診を心掛け、胃に優しい生活習慣を取り入れることで、健康な胃を保つことができます。

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