- 2025年9月17日
長引く咳、見過ごさないで!子どもから大人まで広がる「百日咳」の現状と対策

きなが内科・内視鏡クリニックのブログをご覧いただき、ありがとうございます。
「風邪は治ったはずなのに、咳だけがしつこく続いている…」
「お子さんが夜中に咳き込んで、眠れていない…」
最近、このような症状でご来院される方が増えています。もしかしたら、その咳はただの風邪ではなく、「百日咳」かもしれません。
2025年、百日咳は全国で爆発的に流行しており、8月末時点で累積の報告数は7万人を超え、過去にない規模となっています。決して他人事ではないこの感染症について、本日は正しい知識と対策をお伝えします。
百日咳とは?
百日咳は、「百日咳菌」という細菌に感染することで起こる呼吸器の病気です。約2~3ヶ月かけて、以下のような3つのステップで症状が変化していくのが特徴です。
1:カタル期(約2週間)
はじめは軽い咳、くしゃみ、鼻水といった、風邪とよく似た症状が続きます。この時期に百日咳と気づくのは難しいですが、感染力はすでにあります。
2:痙咳期(けいがいき)(約2~3週間)
風邪の症状が落ち着くと、次第に咳が激しくなります。「コンコンコン」と短い咳が連続したあと、息を吸い込むときに「ヒュー」と笛のような音が鳴るのが特徴です。この息もつかせぬ激しい咳の発作は、夜間に起こりやすい傾向があります。
3:回復期(数週間~数ヶ月)
激しい咳の発作は少しずつ減っていきますが、咳が完全に治まるまでには長い時間がかかります。
【特に注意!】乳幼児と大人の症状の違い
百日咳は、年齢によって症状の出方が大きく異なります。
乳幼児(特に生後6ヶ月未満)

典型的な咳が出ず、突然息を止めたり(無呼吸)、顔色が悪くなったり(チアノーゼ)、けいれんを起こすことがあります。肺炎や脳症などの重い合併症を引き起こし、命に関わることもあるため、最大の注意が必要です。
大人

激しい発作は少なく、しつこい咳が数週間にわたって続くのが主な症状です。ご自身では「ただの長引く咳」と思っていても、気づかないうちに免疫力の低い赤ちゃんや子どもにうつしてしまう感染源となるケースが後を絶ちません。
なぜ今、これほど流行しているのか?
今回の流行の背景には、主に2つの理由があると考えられています。
1.薬が効きにくい「薬剤耐性菌」の増加
近年、一部の抗菌薬が効きにくいタイプの百日咳菌が海外から広がり、日本国内でも見つかるようになっています。
2.長い潜伏期間と感染力
感染してから症状が出るまでの潜伏期間が7日~10日ほどあり、風邪のような症状の時期(カタル期)から感染力を持つため、本人が気づかないうちに家庭や学校、職場で感染を広げてしまいやすいのです。
一番大切なのは「ワクチンによる予防」です

百日咳から、特に重症化しやすい小さな命を守るために最も有効なのがワクチン接種です。
日本では現在、百日咳ワクチンを含む「5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)」が定期接種となっています。生後2ヶ月になったら、できるだけ早く接種を開始しましょう。
ただし、ワクチンで得られた免疫も、年齢とともに少しずつ低下していきます。そのため、ワクチンをきちんと接種した小学生や中学生、そして大人も感染する可能性があります。
ご家族に赤ちゃんが生まれる予定の方は、お兄ちゃんやお姉ちゃん、そしてパパ・ママも、必要に応じてワクチンの追加接種を検討することが、赤ちゃんを守る「コクーン戦略(繭戦略)」として非常に有効です。
長引く咳は、体力を消耗させるつらい症状です。そして、その咳が、あなたの大切な家族、特に赤ちゃんを危険にさらすサインかもしれません。
咳が2週間以上続く場合は、ぜひ一度「きなが内科・内視鏡クリニック」へご相談ください。適切な検査と治療で、皆さまの健康を守るお手伝いをいたします。