- 2025年4月8日
【食道がん】石橋貴明さんの公表に思うこと
症状がなくても胃カメラ検査を受けるべき理由とは?

先日、「とんねるず」の石橋貴明さんが初期の食道がんで療養されることを公表され、多くの方が驚かれたのではないでしょうか。ご本人の一日も早い回復を心よりお祈り申し上げます。
石橋さんのニュースに触れ、「食道がんってどんな病気?」「自分は大丈夫だろうか?」と不安を感じた方もいらっしゃるかもしれません。食道がんは、決して他人事ではなく、私たちの身近に潜む病気の一つです。過去には、桑田佳祐さんや小沢征爾さんといった著名人も罹患されています。
日本でも年間約2万5千人の方が新たに診断されており、特に60歳代以上の男性に多い傾向があります(男女比は約5:1)。しかし、初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。
今回の石橋さんの公表を機に、食道がんについて正しく理解し、早期発見のために何ができるのか、一緒に考えてみませんか?
この記事では、食道がんのリスク、症状、そして早期発見の唯一の鍵となる「胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)」について、詳しく解説していきます。
静かに進行する病気「食道がん」とは?

食道は、喉(咽頭)と胃をつなぐ長さ約25cmの管状の臓器で、食べ物を胃へ送る「通り道」としての役割を担っています。
食道がんは、この食道の最も内側にある「粘膜」から発生します。最初は小さな病変ですが、進行すると食道の壁の奥深くへと食い込み(浸潤)、さらには食道の壁を突き破って周りの臓器(気管、大動脈、心臓など)に広がったり、リンパ管や血管を通って他の臓器(リンパ節、肺、肝臓など)へ転移したりすることがあります。
食道がんにはいくつかのタイプがありますが、日本人の約9割を占めるのが「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」です。近年、食生活の欧米化などの影響で、逆流性食道炎に関連するとされる「腺がん」も増加傾向にあります。
あなたは大丈夫? 食道がんのリスク要因

食道がん、特に日本人に多い扁平上皮がんの発生には、生活習慣が大きく関わっています。
以下の項目に心当たりはありませんか?
- 喫煙: 最大のリスク因子の一つです。長年の喫煙習慣がある方は要注意です。
- 飲酒: 喫煙と並ぶ大きなリスク因子です。特に、お酒を飲むと顔が赤くなる方は注意が必要です。これは、アルコールの分解過程で発生する発がん性物質「アセトアルデヒド」を分解する酵素(Aldh2)の働きが生まれつき弱い体質で、食道がんのリスクが非常に高くなることが分かっています。日本人の約4割がこの体質と言われています。喫煙と飲酒の両方の習慣がある方は、リスクがさらに高まります。
- 熱い飲食物: 65℃以上の熱い飲み物や食べ物を日常的に摂取することも、食道の粘膜を傷つけ、がんのリスクを高めると考えられています。
- 食生活: 野菜や果物の摂取不足(ビタミン不足)、塩分の多い食事(漬物、干物など)もリスク要因となる可能性があります。
- その他: 逆流性食道炎、肥満(特に腺がんのリスク)なども関連が指摘されています。
これらのリスクを減らすためには、禁煙、節度ある飲酒(顔が赤くなる方は特に控える)、熱すぎる飲食物を避ける、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
要注意!食道がんのサインと早期発見の難しさ
食道がんの最も怖い点は、初期には自覚症状がほとんどないことです。そのため、気づかないうちに進行してしまうケースが多くあります。
進行に伴って現れる可能性のある症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 食べ物を飲み込んだ時の胸の違和感(チクチクする、しみる感じ)
- 食べ物が喉や胸につかえる感じ
- 胸やけ
- 体重減少
- 声のかすれ
- 慢性的な咳
- 胸や背中の痛み
しかし、これらの症状が現れた時には、すでにがんが進行している可能性が高いのです。「飲み込みにくい」という典型的な症状は、がんが食道をかなり塞いでしまってから出ることが多いと言われています。
また、「ただの胸やけ」「年のせいかな」などと自己判断してしまい、受診が遅れるケースも後を絶ちません。少しでも気になる症状があれば、放置せずに専門医に相談することが重要です。
早期発見の唯一の鍵!「胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)」

では、症状のない早期の食道がんをどうやって見つけるのでしょうか?その唯一にして最も有効な方法が「胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)」です。レントゲン検査や血液検査では、早期の食道がんを発見することは極めて困難です。胃カメラは、口または鼻から細いカメラを挿入し、食道の粘膜を直接、すみずみまで観察することができます。
【胃カメラでできること】
- 直接観察: 医師がモニターを通して、食道の粘膜の状態をリアルタイムで詳細に確認できます。
- 微細病変の発見: がんの初期段階である、わずかな色の変化、凹凸、粘膜の模様の異常などを捉えることができます。
- 最新技術による精度向上:「BLI(Blue LASER Imaging)観察」などの特殊な光を使って、通常光では見えにくい微細ながんを発見しやすくする技術も進歩しています。
- 組織検査(生検): 疑わしい部分が見つかった場合、その場で組織の一部を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確定診断(病理検査)することができます。
当院の胃カメラ検査の特長
「胃カメラは苦しいのでは?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年は検査技術が進歩し、患者さんの負担を軽減するための工夫がされています。
当院では、内視鏡検査を専門的に行う医師が内視鏡システムを用いて、丁寧かつ正確な検査を心がけております。
特長1.鎮静剤(麻酔)による苦痛の少ない内視鏡検査

静脈注射で鎮静剤を使用すれば、ウトウトと眠っているような状態で楽に検査を受けることができます。多くの方が「気づいたら終わっていた」とおっしゃいます。胃カメラ・大腸カメラともに寝ている間に行う、苦痛の少ない検査が可能です。
特長2.吐き気が起こりにくい経鼻内視鏡

鼻から挿入する、ボールペンの太さほどの細いカメラもあります。口からのカメラに比べて嘔吐反射(「おえっ」となる感じ)が起こりにくく、比較的楽に検査を受けられます。画質も向上しており、精密な観察が可能です。当院長は、吐き気が起こりにくい経鼻内視鏡検査で10,000症例以上を行ってきた経験があります。
特長3.WEB予約システムの導入
当クリニックでは、お忙しい方でも受診しやすいよう、WEB予約システムを導入しております。内視鏡検査においてもぜひご利用ください。
特長4.落ち着いたクリニックの内装
安心して内視鏡検査が受けられるようクリニックの内装にこだわりました。
受付には太陽をモチーフにしたペイントの壁画を用意しました。
「患者様に元気になっていただきたい!」
見ていると元気になれる壁画です。


また、安心して検査が受けられるように、プライバシーに配慮した更衣室、前処置室、回復室をご用意しました。





特に胃カメラをお勧めしたい方
食道がんは進行が速い場合もあります。以下に当てはまる方は、自覚症状がなくても、定期的に胃カメラ検査を受けることを強くお勧めします。
・50歳以上の方 ・喫煙習慣のある方 ・日常的に飲酒される方(特に少量で顔が赤くなる方) ・熱い飲食物を好む方 ・胸やけや逆流性食道炎の症状が続く方 ・肥満傾向の方 ・ご家族に食道がんの既往がある方 |
「症状がないから大丈夫」と思わず、ご自身の健康を守るために、定期的なチェックを習慣にしましょう。
自分のために、大切な人のために、今できること

石橋貴明さんの公表は、私たちに食道がんという病気について改めて考える機会を与えてくれました。食道がんは、初期症状が乏しく、静かに進行する可能性がある病気です。しかし、リスクを知り、適切な対策をとることで、予防や早期発見につなげることができます。そして、その早期発見の最も確実な方法が「胃カメラ検査」です。
「最近、喉のあたりがつかえる感じがする」「胸やけが続いている」といった症状がある方はもちろん、「リスク要因に当てはまるけど、症状はないから…」と思っている方も、ぜひ一度、胃カメラ検査について考えてみてください。
当クリニックでは、患者さんの不安に寄り添い、できるだけ苦痛の少ない、そして精度の高い内視鏡検査を提供できるよう努めております。食道がんに関するご心配や、胃カメラ検査に関するご質問など、どうぞお気軽にご相談ください。
ご自身の健康のために、そして大切な人のためにも、勇気を出して一歩踏み出してみませんか?