- 2025年1月6日
- 2025年1月7日
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍とは
十二指腸は、胃から小腸へ続く最初の部分で、食物を膵液や胆汁と混ぜて消化を助けたり、酸性の胃内容物を中和して小腸が安全に消化できる環境を整える役割を担っています。十二指腸潰瘍は、この粘膜が胃酸やペプシンの過剰な影響で損傷を受け、組織が深部まで破壊されることで発生する疾患です。放置すると、出血や穿孔、狭窄といった重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。
十二指腸潰瘍と胃潰瘍の違い
十二指腸潰瘍は小腸の入口に生じる一方、胃潰瘍は胃の内部に生じるという発生場所の違いがあります。痛みのタイミングも異なり、十二指腸潰瘍は空腹時や夜間に痛みが現れて食事で一時的に緩和されやすく、胃潰瘍は食後に痛みが悪化する傾向があります。さらに、若年層に多いのが十二指腸潰瘍で、高齢者に多いのが胃潰瘍です。
十二指腸潰瘍の原因
ピロリ菌の影響
ピロリ菌は胃と十二指腸の粘膜に感染し、以下の作用を通じて潰瘍を引き起こします。
- 粘膜保護のバリアを破壊し、胃酸からの保護力を低下させる
- 粘膜に炎症を引き起こし、組織の修復能力を妨害する
- 胃酸の分泌を間接的に増加させる
十二指腸潰瘍の症状
十二指腸潰瘍の症状には主に以下のようなものがあります。
- 痛みの性質:鈍い痛みや灼熱感が特徴的
- 痛みの位置:みぞおち(腹部中央やや右寄り)に痛みが集中することが多い
- タイミング:空腹時や夜間に悪化し、食事を摂ることで一時的に軽減します。
出血や吐血の兆候
潰瘍が血管に達すると、次のような出血症状が現れます。
- 吐血:新鮮な赤色またはコーヒーのような色の嘔吐物
- タール状便:黒く粘り気のある便(消化管出血のサイン)
- 貧血症状:疲労感、めまい、息切れ
十二指腸潰瘍の自覚症状チェックリスト
以下の症状がある場合、十二指腸潰瘍の可能性があります。
□夜間の激しい腹痛
□食欲不振や体重減少
□げっぷや胃もたれ
□黒い便や吐血
十二指腸潰瘍の診断方法
胃カメラ(上部内視鏡検査)による診断
内視鏡検査では、粘膜の状態を直接観察し、潰瘍の位置や深さを確認します。必要に応じて、生検を行い、悪性疾患(がん)の有無を排除します。
胃カメラ(内視鏡)は、十二指腸潰瘍の診断に最も効果的な方法です。胃カメラ検査により、潰瘍の位置とサイズ、出血や穿孔の兆候を確認します。また、粘膜採取によりピロリ菌感染の確認も行います。
ピロリ菌の診断に必要な検査
- 血液検査:炎症マーカー、ヘモグロビン値、ピロリ菌抗体
- 便検査:隠れた出血を検出
- 呼気テスト:ピロリ菌感染を確認
十二指腸潰瘍の治療法
薬物治療の種類には以下のようなものがあります。
プロトンポンプ阻害薬(PPI) | 胃酸分泌を抑制し粘膜の修復を促進します。 |
H2受容体拮抗薬 | 軽度の症状に適応します。 |
胃粘膜保護薬 | 粘膜をコーティングし刺激から保護します。 |
抗生物質 | ピロリ菌感染時の除菌治療に使用します。 |
ピロリ菌の存在が確認された場合は除菌療法を行うことで再発リスクを大幅に低減できます。
手術が必要なケース
薬物療法が無効で以下の合併症がある場合、外科手術が検討されます。
- 出血が止まらない場合
- 穿孔が生じた場合
- 十二指腸狭窄が進行した場合
再発予防と生活習慣
十二指腸潰瘍の再発予防には生活習慣の改善も必要になります。
- リラクゼーション法の実践
- 定期的な休暇の取得
- 食事時間の規則的な確保
禁煙の重要性
喫煙は胃酸分泌を刺激し、潰瘍の治癒を妨げるため、禁煙が推奨されます。
定期的な検査とフォローアップ
潰瘍治癒後も年に1回の内視鏡検査を受けることをお勧めします。
十二指腸潰瘍の合併症
潰瘍が深く進行すると十二指腸壁に穴が開く穿孔が発生します。これは緊急手術が必要なになることもある状態で、激しい腹痛や腹膜炎が見られます。再発を繰り返すことで、十二指腸狭窄や慢性的な消化不良が引き起こされる可能性があります。
重篤な症状の兆候
以下の兆候が見られた場合は速やかに医療機関を受診してください。
- 強い腹痛と硬い腹部(急性腹症)
- 持続する吐血またはタール状便
- 激しい嘔吐による脱水症状
十二指腸潰瘍は適切な治療と生活習慣の見直しにより、再発を防ぐことが可能です。早期発見と治療、ストレス管理、定期的な検査を通じて、健康を維持しましょう。