• 2025年2月12日
  • 2025年2月13日

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎とは

虚血性大腸炎とは、大腸の血流が一時的に低下することで発生する炎症性疾患です。特に中高年に多く見られ、大腸の内壁に炎症や潰瘍が生じることで腹痛や血便などの症状が現れます。多くの場合、軽症で経過しますが、重症化すると手術が必要になることもあります。

虚血性大腸炎は、大腸の一部が十分な血流を受けられないことで発生する疾患です。虚血が一時的であれば、炎症が自然に治癒することもありますが、長期間続くと腸壁が壊死し、合併症を引き起こす可能性があります。この疾患は特に血管が狭窄したり、動脈硬化が進行している高齢者に多く見られます。

虚血性大腸炎の原因

虚血性大腸炎の主な原因は、大腸の血流不足です。この血流不足は、動脈硬化や血管の狭窄、血栓形成によって引き起こされます。また、便秘による腸管内圧の上昇や下剤の使用、過剰な運動も一因とされています。その他、高齢者や脱水状態、糖尿病などで血管機能が低下している場合も発症リスクが高くなります。

虚血性腸炎と虚血性大腸炎の違い

虚血性大腸炎は、大腸に限定された血流障害を指します。一方、虚血性腸炎は、小腸を含む消化管全体で虚血が起こる疾患を指します。虚血性腸炎では、腸閉塞や急性腹膜炎を伴うことが多く、緊急手術が必要になる場合がありますが、虚血性大腸炎は比較的軽症で治療できることが多いです。

虚血性大腸炎の症状

腹痛と血便

腹痛は突然発生し、通常は左下腹部に集中することが多いです。この腹痛は、大腸の虚血によって腸壁が炎症を起こしているサインです。数時間後には血便が現れることが一般的で、これは腸壁の炎症や微細な出血によるものです。血便は鮮紅色であることが多いですが、炎症の部位や程度によっては暗赤色になることもあります。

下痢と便秘

虚血性大腸炎では、血便だけでなく下痢や便秘が交互に現れることがあります。下痢は腸内の炎症が原因で腸管の運動が過剰になることで発生します。一方、腸管が炎症や狭窄によって動きが鈍くなると便秘が起こることもあります。

虚血性大腸炎の診断

虚血性大腸炎の診断では、まず症状と病歴を詳細に問診します。その後、血液検査や画像診断を用いて、炎症の有無や他の疾患との区別を行います。血液検査では、白血球の増加やCRP値の上昇が確認されることが多いです。

CT検査と大腸カメラ(下部内視鏡検査)

CT検査は、虚血性大腸炎の初期診断に非常に有効です。CTでは、大腸壁の肥厚や炎症部位を確認できます。また、大腸カメラ(下部内視鏡検査)では直接的に腸内の炎症や出血部位を見ることができ、潰瘍や壊死の有無を詳しく調べることができます。

診断後、軽症例では安静と食事制限を行いながら経過を観察します。重症例では入院し、点滴や投薬治療を行う場合があります。感染症が疑われる場合は抗生物質が投与され、重度の出血や壊死が見られる場合は手術が検討されます。

虚血性大腸炎の治療

治療に必要な管理方法

治療の基本は安静を保ちながら、大腸の炎症を自然に鎮めることです。軽症の場合、絶食や低残渣食を指示されることが多く、水分補給と腸の休息が重要です。また、点滴による栄養管理が行われることもあります。

食事療法

食事療法では、腸に負担をかけにくい食品を選ぶことが大切です。刺激の強い食品(辛いもの、アルコール、カフェイン)は避け、低脂肪で消化しやすい食品(お粥、豆腐、スープなど)を中心に摂取します。食物繊維が多すぎる食品も、腸の負担を増大させる可能性があるため注意が必要です。

重症度に応じた治療法

軽症の場合は保存的治療で十分回復が期待できますが、重症例では抗生物質やステロイドが使用されることがあります。腸管が壊死したり、大量出血が続く場合は手術が必要となります。

虚血性大腸炎の経過と予後

虚血性大腸炎は、軽症例であれば1~2週間で自然治癒することが一般的です。ただし、症状が慢性化する場合や再発を繰り返す場合もあるため、適切な管理が必要です。

完全に症状が治まった後でも、腸内に炎症の痕跡が残っていることがあります。そのため、再発の早期発見のために定期的な内視鏡検査が推奨されます。

再発のリスクを下げるためには、生活習慣の改善が重要です。便秘の予防や脱水を防ぐための十分な水分摂取、バランスの良い食事が推奨されます。

虚血性大腸炎と関連する疾患

動脈硬化との関連性

動脈硬化による血管の狭窄は、大腸の虚血状態を引き起こす主要因の一つです。心血管疾患の既往がある場合、虚血性大腸炎のリスクが高くなります。

その他の消化器疾患との関係

虚血性大腸炎は、他の腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)と症状が類似することがあります。そのため、正確な診断が重要です。

虚血性大腸炎が引き起こす合併症

虚血性大腸炎が進行すると、腸管の壊死や腹膜炎などの合併症を引き起こす可能性があります。これらは緊急手術が必要な重篤な状態です。

虚血性大腸炎における入院と手術

入院が必要なケース

軽症例では外来治療が可能ですが、重度の腹痛や血便、大量出血が見られる場合は入院が必要となります。入院中は点滴や投薬を通じて腸の回復を支援します。

手術の選択肢とその適応

手術は、大腸の一部が壊死した場合や、保存的治療が効果を示さない場合に検討されます。壊死した部分を切除し、健康な腸を再接続する手術が一般的です。

手術後は腸管の機能を回復させるため、食事や活動量に制限が設けられることがあります。医師の指導のもと、段階的に通常の生活に戻ることが推奨されます。

虚血性大腸炎は、適切な治療と生活習慣の改善によって多くの場合回復が見込める疾患です。早期発見と治療、再発予防のための生活管理が重要です。また、必要に応じて定期的に検査を受けることが、長期的な健康維持につながります。

虚血性腸炎の生活習慣

食事とライフスタイルの改善

便秘を防ぐために、適量の食物繊維を摂取し、水分補給を欠かさないことが重要です。また、アルコールや刺激物を控え、消化に優しい食品を選ぶことが大切です。

ストレス管理の方法

ストレスは血管収縮や腸内環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、日常的なストレス管理が重要です。ヨガやマインドフルネス、適度なリラクゼーションが推奨されます。

適度な運動は腸の蠕動運動を活性化し、便秘を予防します。一方、過度な運動や激しい活動は血流を妨げる可能性があるため、適度な運動を心がけることが重要です。

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