• 2025年2月12日
  • 2025年2月13日

アニサキス症

アニサキス症とは

アニサキスは線虫に分類される寄生虫で、主に魚介類を介して人に感染し、この感染症は「アニサキス症」と呼ばれます。感染すると、激しい腹痛やアレルギー反応を引き起こすことがあり、生の魚介類を食べる文化がある地域では食品衛生上の重要な課題とされています。

急性期の症状としては、摂取後数時間から数日以内に胃壁や腸壁への幼虫の侵入によって炎症が起き、激しい腹痛、悪心、嘔吐が発生します。

一方、慢性症状として腸閉塞や腸管の癒着、まれに穿孔が起こることがあり、長期間にわたる腹部不快感や食欲不振が報告される場合もあります。

さらに、アレルギー反応として蕁麻疹、喘息、アナフィラキシーショックなどの即時型アレルギーが現れることもあり、軽症ではかゆみや発疹にとどまりますが、重症例では呼吸困難や血圧低下を伴い、緊急医療が必要となることがあります。

アニサキスの種類と特徴

アニサキス属には複数の種がありますが、人に感染を引き起こす主なものは、以下の2種類があります。これらの幼虫は白色または透明で細長く、長さ2~3cm程度です。魚介類の内臓や筋肉に寄生しているため、加工や調理の段階で見つかることがあります。

  • Anisakis simplex :多くの魚種に広く分布しており、特に北大西洋や北太平洋の魚介類で多く見られます。
  • Pseudoterranova decipiens :主にタラなどの冷涼な海域の魚に寄生します。

アニサキスがいる魚介類

アニサキスは内臓だけでなく筋肉部分に寄生することもあり、サバ、アジ、イワシ、サケ、タラ、イカなどの海水魚や貝類(ホタテやイカ)で特に寄生の可能性が高く、生で食べる機会が多いサバやイカは、加工処理が不十分な場合、感染リスクが高まり、さらに冷涼な海域に生息する魚種は寄生率が高い傾向があります。

アニサキスは、魚肉を透かして光を当てることで、目視でもアニサキス幼虫を確認することができます。幼虫は細長い糸状で、筋肉部分や内臓付近に巻き付いていることが多いです。調理時に細かく切り分けることも、幼虫の発見に役立ちます。

アニサキスの寄生のメカニズム

アニサキスは複雑な生活環を持ち、海洋生態系の中で重要な位置を占めています。

1.卵の排出

海洋哺乳類(イルカやクジラ)の腸内で成虫となり、糞便とともに卵が海中に放出されます。

2.中間宿主

卵から孵化した幼虫がオキアミなどの甲殻類に取り込まれます。

3.魚介類への移動

これを捕食した魚介類の内臓や筋肉に幼虫が移行し、寄生します。

4.人間への感染

加熱や冷凍処理が不十分な魚介類を人が摂取することで、胃や腸に侵入します。胃壁や腸壁に侵入した幼虫は免疫反応を引き起こし、激しい炎症や痛みを引き起こします。

アニサキスの感染およびその原因

感染ルートとリスク

アニサキス症は、寄生虫を含む魚介類を生または不適切に調理して摂取することで発生します。特に以下の食品がリスクとなります。

  • 刺身や寿司、カルパッチョやマリネ。
  • 酢漬けや塩漬けが不十分な魚。

加工場での取り扱い不備や鮮度が落ちた魚でも感染リスクが高まります。特に内臓に寄生する幼虫が筋肉部分に移行するため、内臓処理が遅れた場合にリスクが増加します。

アニサキス感染の可能性

感染リスクが高い地域では、アニサキスが寄生する魚介類を摂取する機会が多いことが背景にあります。特にサバ、イカ、タラ、サケ、アジなどが主要な媒介魚種です。冷涼な海域の魚介類では寄生率が高く、漁獲後の処理方法によってもリスクが変動します。

食品衛生における注意事項

魚介類を取り扱う際には、以下の点に注意が必要です。

  • 内臓を迅速に取り除くことで、筋肉への移行を防ぐ。
  • 魚肉を冷凍処理することで幼虫を死滅させる。
  • 調理前に目視で幼虫を確認し、取り除く。

衛生管理が不十分な場合、アニサキス症の発生率が高まるため、食品業界では啓発活動と徹底的な管理が求められます。

アニサキスの治療法

胃内に侵入したアニサキスは、胃カメラ(上部内視鏡)を用いて物理的に除去します。腸内感染の場合は、症状を抑える対症療法や、重症例では手術が必要になることがあります。

内視鏡検査は、アニサキス症の診断と治療において極めて有用です。胃壁や腸壁に侵入した幼虫を直接観察できるため、診断が迅速に行えます。また、内視鏡を用いて幼虫をその場で除去することも可能です。

アニサキスによる食中毒の予防

加熱処理の有効性

アニサキス幼虫は70℃以上の加熱で確実に死滅します。焼き物や煮物、揚げ物では十分な加熱を行うことで感染リスクを排除できます。

冷凍処理でのアニサキス死滅

冷凍処理も予防策として有効です。マイナス20℃以下で24時間以上冷凍することで幼虫は死滅します。冷凍処理された魚介類は生で食べても安全です。

生食時の注意点

生食する場合、鮮度の高い魚介類を選び、目視での確認を徹底することが重要です。信頼できる業者からの購入や、加工処理が適切に行われた製品を選ぶことが推奨されます。

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