• 2025年1月23日

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは

逆流性食道炎(GERD: Gastroesophageal Reflux Disease)は、胃酸や胃内容物が食道に逆流して粘膜を刺激し、炎症を引き起こす疾患です。患者様によって症状の重症度は異なり、放置すると食道がんのリスクが増加することが知られています。

日本では人口の10~15%に影響があるとされ、先進国では高脂肪食や肥満の増加に伴って有病率が上昇しており、症状が慢性化すると生活の質(QOL)を大きく損ないます。

また、胃酸は食物の分解と病原体の殺菌という重要な役割を担う一方で、食道は胃酸に耐える構造ではないため逆流によって炎症や損傷を受けやすく、長期間放置すると粘膜が変性してバレット食道(前がん病変)へ進行する可能性があります。

逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎の初期症状

  • 胸やけや喉の違和感など軽微な症状が特徴で、見逃されやすい。
  • 食後に特に症状が現れ、横になると悪化する。
  • 症状は慢性的に進行し、治療を受けないと悪化する傾向があります。

胸やけや呑酸

胸やけ

  • 胸部中央に焼けるような痛みや不快感を感じる。
  • 食事後や横になった際に悪化することが多い。

呑酸

  • 酸っぱい液体や胃液が喉まで上がり、不快感や苦みを感じる。
  • 夜間に特に強く出る場合、睡眠の質が低下する原因となる。

逆流性食道炎と生活習慣

肥満

  • 腹部の脂肪が胃を圧迫し、胃内容物の逆流を引き起こす。
  • 肥満患者のGERD発症率は非肥満者の2倍以上。

食生活

  • 高脂肪食、揚げ物、炭酸飲料が胃酸分泌を刺激し、逆流の頻度を高める。
  • 夜遅い食事や早食いも胃の負担を増加させる。

ストレスの関連性

  • ストレスは胃酸分泌を促進し、下部食道括約筋(LES)の機能低下を助長する。
  • ストレスによる過食や不健康な食生活が間接的に影響を与える。

姿勢や生活習慣の重要性

  • 姿勢:食後すぐに横になると重力の影響で逆流が起こりやすい。
  • 生活リズム:不規則な睡眠や食生活は胃腸の機能を低下させる。

逆流性食道炎の診断

胃カメラ(上部内視鏡検査)

逆流性食道炎の診断には胃カメラ(上部内視鏡検査)が有効であり、食道粘膜の炎症やびらん、潰瘍の有無を直接確認できるほか、バレット食道やがんのリスク評価のために定期的な検査が推奨されています。

また、胃カメラは食道と胃の接合部を詳細に観察して病変の有無を確認し、胃炎や潰瘍など他の疾患との鑑別診断にも役立ちます。

さらに、高次医療機関で行う検査としては、24時間pHモニタリングによる食道内の酸性度の測定で逆流の頻度や程度を評価する方法や、食道内圧検査による下部食道括約筋(LES)の弛緩や収縮機能の評価があります。また、CTやMRIなどの画像検査が他疾患を除外する目的で行われることもあります。

逆流性食道炎の治療法

逆流性食道炎の治療法には主に薬物療法があり、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)やプロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃酸分泌を強力に抑制する第一選択薬として使用され、症状の改善率が高く、長期管理にも適しています。また、H2受容体拮抗薬は軽症例や夜間症状の緩和に効果的であり、制酸薬は一時的な胸やけや呑酸の緩和に用いられます。また、これらの薬をオンデマンドで(症状があるときだけ)内服することで効果が得られることもあります。

生活習慣の改善

食事の見直し

〇推奨される食品

  • 消化しやすい食品(蒸し野菜、白身魚)。
  • 胃酸を中和する食品(ヨーグルト、牛乳)。

×避けるべき食品

  • 高脂肪食品
  • 炭酸飲料
  • アルコール
  • 辛い調味料。

運動習慣の取り入れ方

  • 軽い有酸素運動(ウォーキング、ヨガ)は胃腸の動きを促進。
  • 食後すぐの激しい運動は避ける。

逆流性食道炎と子供

子供の逆流性食道炎では嘔吐、腹痛、食欲不振、喉の違和感などの症状が見られ、慢性的な咳や喘息様症状を伴うこともあります。早期診断は、成長期の栄養吸収障害を防ぎ、食道狭窄や慢性炎症への進行を抑えるために重要です。

治療は主にPPIや制酸薬による薬物療法が中心で、生活習慣の改善も求められます。

予防には規則正しい食生活、十分な睡眠、適度な運動を心掛けることが効果的で、これらを組み合わせることで症状の緩和や再発防止が期待されます。

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