• 2025年2月12日
  • 2025年2月13日

大腸憩室症

大腸憩室症とは

Diverticulosis is a condition characterized by the formation of diverticula in the walls of the intestines. 3D rendering

大腸憩室症は、腸壁が弱くなった部分が袋状に膨らむことで形成される疾患です。ほとんどの場合無症状ですが、炎症や出血を引き起こす場合があり、重症化すると手術が必要になることもあります。

大腸と憩室の構造

大腸は、盲腸から始まり、結腸、直腸を経て肛門に至る消化管の最後の部分です。ここでは水分の吸収や便の形成が行われます。憩室は腸壁の弱点に形成される袋状の突出部で、通常は粘膜と粘膜下層で構成されています。憩室の形成には腸管内の圧力が関与しており、便秘や腸管運動の低下が原因となります。

病気の進行

憩室症の進行には、以下のステップが関与します。

  • 腸内圧の上昇:便秘や硬い便により腸管内圧が高まり、腸壁の弱い部分に大きな負荷がかかります。
  • 腸壁の劣化:加齢や炎症性疾患の影響で腸壁が薄くなり、憩室が形成されやすい状態になります。
  • 炎症や感染:憩室内に便や細菌が閉じ込められると炎症が起こり、憩室炎につながることがあります。

大腸憩室症の主な原因

生活習慣と大腸憩室症の関係

  • 低食物繊維の食事:食物繊維が不足すると便が硬くなり、腸内圧が上昇します。この状態が続くと憩室が形成されやすくなります。
  • 運動不足:運動不足により腸管運動が低下し、便秘が促進されます。
  • 慢性的な便秘:便秘が続くと腸壁に負担がかかり、憩室のリスクが高まります。

年齢と発症リスク

年齢は大腸憩室症の主要なリスク因子です。50歳以上の成人の約30~50%に憩室が見られ、80歳以上ではその割合が70%を超えると報告されています。加齢に伴い、腸壁の筋層が弱くなることが一因です。

ストレスの影響

ストレスは腸内環境を悪化させ、腸管運動を乱す可能性があると考えられています。特にストレスホルモン(コルチゾール)の増加が腸管の圧力を高める可能性があります。

大腸憩室炎の症状

腹痛と出血

  • 腹痛:憩室炎を起こしている部位に痛みが出ます。左下腹部に鈍痛が集中することが多いですが、右側に痛みが現れることもあります。
  • 出血:便に鮮血が混じることがあり、これは憩室の破裂や周囲の血管損傷によるものです。

重症化の兆候

  • 激しい腹痛、発熱、悪心が見られる場合は憩室炎の可能性があります。
  • 腸閉塞や穿孔が進行すると、便秘や腹膜炎が発生し、緊急手術が必要になることがあります。

症状の変化について

  • 症状が一時的に改善しても、炎症が慢性化して再発することがあります。これにより腸の狭窄や癒着が進行し、排便困難や腹部膨満感が増加することがあります。

憩室炎の合併症

  • 腸管穿孔:腸壁が破れることで内容物が腹腔に漏れ、腹膜炎を引き起こします。
  • 膿瘍形成:感染が進行すると、局所的に膿が溜まる膿瘍が発生します。
  • 瘻孔形成:腸管が膀胱や皮膚と異常に接続し、感染や排泄機能障害を引き起こします。

大腸憩室症の診断

大腸カメラ(下部内視鏡検査)

大腸カメラ(下部内視鏡検査)は、憩室の有無を直接確認できる最も正確な方法です。ただし、急性期には腸穿孔のリスクがあるため慎重に行う必要があり、一般的には炎症が収まった後に実施されます。

CTよる検査

CTスキャンは憩室炎や膿瘍の診断に非常に有効です。炎症の広がりや周囲組織への影響を詳細に把握でき、特に緊急性の高い症例での利用が推奨されます。

大腸憩室炎の治療

大腸憩室炎の治療には、まず軽度の憩室炎に対して経口抗生物質が処方されます。重症例では静脈注射による抗生物質が必要となるほか、炎症による痛みを緩和するための鎮痛薬も使用されます。ただし、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は腸内出血のリスクを高めるため注意が必要です。また、腸管安静をはかるために、入院のうえで絶食とすることもあります。

また、重症例や繰り返す憩室炎の場合には部分的結腸切除術が検討され、腸閉塞や穿孔が発生した際には、一時的または永久的に人工肛門(ストーマ)を設置する外科的治療が行われることがあります。

大腸憩室症の予防法

食事の改善と食物繊維

野菜、果物、全粒穀物を含む高繊維の食事を摂取することで便通が改善し、腸内圧を低下させることができます。

運動の役割

ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、腸の蠕動運動を促進し、便秘を予防します。

ストレス管理と健康的な生活習慣

ストレスが腸内環境に悪影響を与えるため、リラクゼーション法や適切な睡眠を心がけることが重要です。また、喫煙や飲酒を控えることで腸の健康を保つことができます。

大腸憩室症は、食事や生活習慣を見直すことで予防可能な疾患です。早期発見と適切な管理により、合併症を防ぎ、腸の健康を維持することができます。

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