- 2025年1月7日
大腸がん
大腸がんとは
大腸がんは結腸や直腸に発生する悪性腫瘍で、日本人のがん死亡原因として上位に位置しています。初期段階では自覚症状が乏しく、何らかの症状があってから受診した場合は進行してから発見されることが多いため、定期的な検診による早期発見が重要です。大腸がんは、早期発見できれば治癒が期待できる(治る)がんです。
大腸がんの原因と発生メカニズム
大腸がんの発生には、便秘、高脂肪・低食物繊維の食事(食の欧米化)や喫煙・飲酒などの生活習慣、遺伝的要因や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)などが影響します。これらの要因による長期的な刺激や炎症を受けた腸粘膜細胞は、まず良性のポリープとして増殖し、遺伝子変異の蓄積によって一部が悪性化することで大腸がんへと進行していきます。また、血縁者に大腸がん患者がいる場合や特定の遺伝子変異がある場合は発症リスクが高いため、早期のポリープ発見と除去が大切です。
大腸がんの種類
- 結腸がん:盲腸からS状結腸までの部分に生じるがんで、腸内容物の滞留時間が長いことから、粘膜が発がん性物質に長時間さらされやすい点が特徴です。
- 直腸がん:肛門に近い直腸に発生し、排便時に血便が見られるほか、進行に伴い排便困難や残便感などの症状が現れます。
大腸がんの症状
初期症状
初期段階では症状が乏しく、多くの患者が異常に気づかないことが一般的です。軽い便秘や下痢、微量の血便などが見られる場合がありますが、これらの症状は他の消化器疾患とも類似しているため注意が必要です。
自覚症状
がんが進行すると、便に混ざった血液や黒色便が見られることがあります。さらに、下痢や便秘、便の形状が細くなる、腹部膨満感が増すなどの症状も現れます。進行した場合には、著しい体重減少や貧血が起こることもあります。
血便や下痢の症状について
血便は、大腸がんの最も顕著な症状の一つです。鮮血の場合は直腸に近い部位のがん、黒色便の場合は結腸がんの可能性が考えられます。また、がんの進行により腸内の狭窄が起きると、下痢や便秘が交互に現れることがあります。
腹痛と体重減少の関係
腹痛は、腸管内の腫瘍が大きくなり、腸閉塞を引き起こす際に現れることが多いです。また、がんの進行に伴い栄養吸収が低下するため、体重が急激に減少することがあります。このような症状が現れた場合は、早急な検査が必要です。
大腸がん症状チェックリスト
これらの項目に当てはまる場合は医療機関を受診することをお勧めします。
□血便や黒色便がある
□最近便秘や下痢が増えた
□腹痛や腹部膨満感が続いている
□体重が減少している
□貧血の症状(疲れやすさ、息切れ)がある
大腸がんの検査方法
大腸カメラ(下部内視鏡検査)の流れ
大腸カメラ(下部内視鏡検査)は、専用のカメラを使用して大腸内部を直接観察し、病変を確認する検査です。検査前には腸内をきれいにするための下剤を服用します。検査中には、ポリープや異常な組織が見つかった場合に、その場で生検や内視鏡的切除を行うことも可能です。
便潜血検査の重要性
便潜血検査は、大腸がんのスクリーニング検査として世界的に広く利用されています。この検査では、目に見えないレベルの微量な血液が便に混ざっているかどうかを確認します。1回でも陽性結果が出た場合には、大腸ポリープが認められる確率は陰性と人と比べて高いため、内視鏡検査で精密検査を受けられることを強くお勧めします。
精密検査と診断基準
内視鏡検査でがんが認められた場合、精密検査ではCTスキャンやMRIを用いてがんの広がりや転移の有無を評価します。また、PET-CT検査によってリンパ節や他臓器への転移が詳しく調べられます。診断基準としては、がんが粘膜内に留まっているか、筋層やリンパ節への浸潤があるかを評価します。
大腸がんのステージと分類
大腸がんの進行度は、一般的に**Stage 0(最初期)からStage IV(転移あり)**まで分類されます。このステージは腫瘍の大きさや深達度(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)を総合的に評価した「TNM分類」に基づいて決定され、治療方針や予後(余命)の見通しを考える上で非常に重要です。
Stage 0 | がんが粘膜内にとどまる段階で、内視鏡治療による切除が可能な場合が多く、再発リスクが低いことが特徴です。 |
Stage I~II | がんが粘膜下層や筋層、またはさらに深い層に達していても、リンパ節転移や遠隔転移がない段階です。がんの深達度に応じて、手術治療や内視鏡治療の適応が検討されます。 |
Stage III | リンパ節転移が認められる場合で、手術治療に加えて化学療法の併用が推奨されることが多く、再発リスク低減を目的とした治療計画が立てられます。 |
Stage IV | 遠隔転移(肝臓や肺など)が確認される段階で、手術、化学療法、放射線療法などを組み合わせた治療が検討され、根治が難しい場合もあります。 |
進行度に応じた治療の違い
ステージが進むほど治療の選択肢が複雑になり、Stage 0では主に内視鏡治療が可能ですが、Stage III以上では手術や化学療法が必要となることが多く、腫瘍の広がりに応じて治療計画が立てられます。特に進行がんでは、患者さんの全身状態や合併症も考慮しながら、複数の治療法を組み合わせることが一般的です。
リンパ節転移の影響
リンパ節転移の有無はがんの進行度を評価する上で重要な指標であり、転移が確認されると再発リスクが高まるため、化学療法を併用する治療が選択されることが多いです。手術前後に行われる化学療法は、残存するがん細胞の減少や再発予防を目的として実施されます。
大腸がんと余命
大腸がんのステージごとの生存率をみると、早期発見(Stage 0やI)の場合は5年生存率が90%以上と非常に高い一方で、Stage IVでは20%以下に低下します。検診発見では早期がんが多く、症状で受診して発見される場合は進行がんが多くなります。このことから、定期検診による早期発見がいかに重要であるかがわかります。
年齢別の余命と影響因子
年齢が高くなるほど手術や化学療法に伴う体力的・身体的負担が大きくなり、術後の回復力も低下する傾向があります。しかし、適切な治療を受けることで大幅な生存率の改善も期待できるため、年齢にかかわらず早期診断と治療が大切です
生活習慣が余命に与える影響
大腸がん治療後の再発予防や余命の延長には、禁煙やバランスのよい食事、適度な運動などの生活習慣が重要な役割を果たします。これらの要素を日常生活に取り入れることで、治療効果の維持や術後のQOL(生活の質)向上につなげることができます。
大腸がんの治療法
手術治療の選択肢
手術は、大腸がん治療の中心的な方法です。早期がんの場合、大腸カメラ(下部内視鏡)治療で腫瘍を切除することが可能ですが、進行がんでは開腹手術や腹腔鏡手術で腸の一部を切除し再建します。
化学療法と放射線療法の役割
化学療法は、手術後の補助療法として使用されることが多く、がん細胞の増殖を抑える役割を果たします。放射線療法は主に直腸がんに対して行われ、がんの縮小や症状の緩和を目的とします。
大腸がんの予防策
定期的な検診の重要性
大腸がんは早期発見によって治療の成功率が大きく向上します。特に毎年の便潜血検査や内視鏡検査を定期的に受けることが推奨されます。
食生活と運動習慣の見直し
高脂肪食を控え、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することが重要です。また、毎日の適度な運動が腸の働きを活発にし、発がんリスクを低減します。
リスクを減少させる要因
禁煙や飲酒の制限、適切な体重管理、ストレス軽減、定期的な運動習慣、便秘の予防や治療が大腸がん予防に役立ちます。また、定期的な健康診断でリスクを早期に発見することも効果的です。
大腸がんは早期発見と適切な治療が予後を大きく左右する疾患です。生活習慣の見直しと定期的な検診を通じて、発症リスクを最小限に抑えることが可能です。