- 2025年1月7日
大腸ポリープ
大腸ポリープとは
大腸ポリープは、大腸内壁の粘膜から突出する異常な組織の塊で、形状や大きさ、性質がさまざまです。多くは良性ですが、一部はがん化する可能性があるため、早期発見と適切な対策が重要です。
大腸ポリープができやすい人の特徴
大腸ポリープは、腸内の正常な細胞が異常に増殖し、粘膜の表面に突起状の組織が生じる疾患です。特定のリスク因子を持つ人ではできやすい傾向があり、原因としては細胞の遺伝子変異や慢性炎症、食生活などが関係しています。
1. 年齢と遺伝的要因
・加齢:50歳以上になると大腸ポリープの発生率が急増します。これは、加齢に伴い細胞分裂時の異常が蓄積しやすくなるためです。ただし、20歳代や30歳代でも、腫瘍性ポリープやがんが認められることもありますので、全く心配がないわけではありません。
・家族歴・遺伝子変異:大腸ポリープや大腸がんの家族歴がある人は、そうでない人に比べて発症リスクが高いことが知られています。特に、家族性大腸腺腫症(FAP)や遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)などの遺伝性疾患をもつ場合、若年層でも発症する可能性があるため注意が必要です。
2. 生活習慣・食生活
・高脂肪低食物繊維の食事:高脂肪食や加工肉・赤身肉の多い食事は、腸内で発がん性物質の生成を促進し、大腸ポリープのリスクを高めます。一方、食物繊維は腸内の有害物質を吸着して排出するため、リスク低減に役立ちます。
・喫煙・過度の飲酒・肥満:タバコや過度のアルコールは細胞に悪影響を与え、ポリープの形成を促進します。また肥満も、腸内環境の悪化や代謝異常を引き起こすため、リスクを高める要因です。
・慢性的な便秘:便秘によって腸内に発がん性物質が長く留まると、大腸粘膜への刺激が続き、ポリープ形成のリスクが上昇します。
3. 炎症性疾患
・潰瘍性大腸炎やクローン病:これらの慢性炎症性疾患を持つ方は、大腸粘膜に長期的な炎症が起こりやすく、ポリープができる確率が高まります。炎症によって粘膜細胞へのダメージや再生を繰り返すことで、細胞増殖の異常が生じやすくなります。
4. 発生の根本的メカニズム:遺伝子変異
・細胞分裂時の損傷・変異:細胞分裂の過程で遺伝子が損傷を受けると、制御不能な増殖が起きる場合があります。腺腫性ポリープでは、この遺伝子変異ががん化への最初のステップとなることが多いです。
大腸ポリープの症状
見た目でわかる大腸ポリープの兆候
大腸ポリープは多くの場合無症状ですが、大きくなると以下のような兆候が現れる場合があります。
- 便の変化:便に血液が混じる、黒っぽい便が出る、便の形状が細くなるなどの変化が見られます。
- 排便習慣の変化:便秘や下痢が増え、頻度や便の性状が以前と異なることがあります。
- 腸管内圧迫:大型のポリープでは腸管を圧迫し、腹部膨満感や排便困難を引き起こすことがあります。
大腸ポリープによる痛みや出血の症状
ポリープが腸内で出血を引き起こすと、便に鮮血が混じることがあります。これは特に直腸近くのポリープで顕著です。また、ポリープが腸壁を刺激し、大きさによって腸の動きを妨げると、腹痛が生じることもあります。ポリープががん化すると、出血が慢性化し貧血を伴うことがあります。
症状が現れる時期とその進行
大腸ポリープは長期間無症状で存在することが多く、症状が現れるのはポリープが一定の大きさに成長し、腸管に影響を与えるようになってからです。特に悪性化する段階では、痛みや体重減少、慢性的な下痢や便秘が見られることがあります。
大腸ポリープの診断方法
大腸カメラ(下部内視鏡検査)の流れ
大腸カメラ(下部内視鏡検査)は、肛門からスコープを挿入し、大腸全体を直接観察する方法です。検査前には腸内を清掃するための下剤を服用し、腸をきれいにします。検査中にポリープが発見されると、その場で切除または生検が行われ、組織の性質が確認されます。この検査は精度が高く、早期発見のためのゴールドスタンダードとされています。
便潜血検査と診断
便潜血検査は、大腸ポリープや大腸がんを早期に発見するためのスクリーニング検査です。便中の血液を微量でも検出し、異常が見られた場合に精密検査として内視鏡検査を行います。便潜血検査は簡便で低コストですが、偽陰性や偽陽性が出る可能性もあるため、確定診断には内視鏡が必要です。
大腸ポリープの治療法
大腸ポリープ切除方法
ポリープの大きさや形状に応じて、さまざまな切除法が用いられます。小さなポリープはスネアポリペクトミーで簡単に除去可能ですが、大型または茎のないポリープでは内視鏡的粘膜切除術(EMR)や粘膜下層剥離術(ESD)が適用されます。これらの技術は低侵襲で、高い成功率を誇ります。
ポリープ切除後の経過観察
切除後の経過観察は、再発や新たなポリープの発生を防ぐために欠かせません。腺腫性ポリープが発見された場合、1~2年後の内視鏡検査が推奨され(当院では基本的には初回2年後をお勧めしていますがポリープの大きさや数により変動します)、その後も定期的なフォローアップが推奨されます。
日帰り手術と入院の選択肢
ポリープ切除のほとんどは日帰りで行われますが、出血リスクが高い場合や患者の体調次第では短期間の入院が必要となることがあります。医師は個々の患者に合わせて最適な治療プランを提案します。当院での日帰り切除のリスクが高いと判断されたポリープが認められた場合には、相談のうえで適切な医療機関を紹介させていただきます。
大腸ポリープの切除後の注意点
手術後の痛みと合併症
術後に軽度の腹痛や違和感を感じることがありますが、通常は数日で解消します。まれに出血や腸穿孔などの合併症が発生することがあり、こうした場合は直ちに医療機関を受診する必要があります。
術後の生活制限とケア
術後の数日は腸に負担をかけないよう、消化に優しい食事を摂ることが重要です。刺激物やアルコールは避け、食物繊維を徐々に増やすようにします。また、重い物を持つことや激しい運動は避けるべきです。
切除後のフォローアップ
切除後は、ポリープの性質に応じてフォローアップが計画されます。特に悪性の可能性があった場合は、頻繁な内視鏡検査が推奨されます。
大腸ポリープと大腸がんの関係
悪性だった場合のリスク
腺腫性ポリープはがんの前段階とされ、サイズが大きいほどがん化リスクが高まります。早期に切除することで、このリスクを大幅に低減できます。
早期発見とその重要性
ポリープが無症状であることが多いため、定期的な検診が早期発見には不可欠です。毎年便潜血検査を受けるとともに、特に高リスク群の人々は40歳を過ぎたら定期的な大腸内視鏡検査を強くお勧めします。低リスクの場合でも、毎年の便潜血検査とともに5~10年に1回程度の大腸内視鏡検査をお勧めします。
大腸がん発症の確率と要因
腺腫性ポリープが放置されると、5~10年以上の期間をかけて大腸がんに進行する可能性があります。この確率はポリープの形状や遺伝的要因によって異なります。
大腸ポリープの予防法
食事と生活習慣の改善
野菜や果物を多く含む食事は、大腸ポリープの発生を予防します。食物繊維は腸内の老廃物を吸収して排出するため、腸内環境を整える効果があります。
運動や飲酒・喫煙の影響
定期的な運動は腸の蠕動運動を活発化し、便秘を予防します。一方で、喫煙や飲酒は腸内環境を悪化させ、ポリープのリスクを高めるため、これらの習慣を減らすことが推奨されます。
遺伝性疾患との関連
遺伝的にリスクが高い場合、若年からの定期的な検診が必要です。遺伝カウンセリングや早期介入により、リスクを管理することが可能です。
大腸ポリープは、放置するとがん化するリスクがあるため、早期発見と適切な治療が重要です。生活習慣の改善や定期検診を通じて予防し、腸の健康を維持することが、健康長寿の鍵となります。